SSブログ

「十字砲火」(エドワード・ドミトリク) [感想]

映画を見るなら、DVDである。画面が鮮明だ。

今の映画館は大音響で高齢者にはキツイ。映画は観るものではなく、体験するものになった。

それにずっと見ていられない。途中休憩がほしい。40分ぐらいで、休みたい。映画館ではそれは不可能だが、家でDVDを見る分には自分の好きなように休める。

いつの間にか、DVDオンリーになってしまったね。5G時代になれば、ダウンロードするようになる。CDにせよ、DVDにせよ、骨董品になる可能性が高い。収納スペースが不必要になるから歓迎だ。


DVDで「十字砲火」を見る。1947年の作品。つまり、72年前の映画だ。

監督は、エドワード・ドミトリクで、このあと、赤狩り時代に仲間を売ったことで裏切り者と呼ばれた。エリア・カザンと同じである。

この映画は人種差別問題をテーマにしている点で重要である。ユダヤ人差別を俎上に乗せている。

被害者はユダヤ人であるということだけで殺されてしまう。

しかし、ユダヤ人ばかりではなく、アイルランド人も人種憎悪殺人の対象になった時代もあったらしい。ロバート・ヤングの警部がいっている。ローマ(カトリック)のスパイと疑われたのだ。

今回見ていて、別なことに気がついた。この映画は復員兵の心理も重要なテーマである。

戦時中は明確な目的があった。敵を倒すことである。その最大の目的が失われた。宙ぶらりんになったような不安感、元の生活にきちんと戻れるかという不安感が復員兵にはあったらしい。

(日本の戦後映画で復員兵の心理を描いたものがあったのか、私は思い出せない。)

いくつかのこと。

映画は夜に始まり、夜に終わる。昼間の場面がない。一晩の出来事を描いた。

出演者はタバコを大量に吸っている。タバコを吸うのが当たり前だった。それが今では正反対だね。価値観が逆さまになった。

この映画には黒人が出てこない。当時のハリウッド映画の常識だった。ユダヤ人差別は描けても黒人差別はまだ問題視されていなかった。


この映画の結末は強引だが、昔のハリウッド映画は乱暴な終わらせ方をするものが多かった。だから、90分程度にまとめることができた。

サスペンス映画としても上出来で一見の価値がある。「サスペンス映画コレクション」に収められているものを見た。廉価版だが画像は鮮明だ。

人種差別がなくなることがあるだろうか? こういうことは年齢によって見方が異なる。若いときは、差別をなくせると思う。老いると、なくせないと思うようになる。

いったん植え付けられた偏見は、何百年と続く。50年、100年で解消されるものではない。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感